小湊フワガネク遺跡が国指定史跡に

奄美看護福祉専門学校の周囲には、土地境界にソテツが植栽された美しい畑地が広がります。
この景観も、今ではほとんど見ることができない奄美の伝統的農業景観として非常に貴重なも
のです。
学校に隣接する畑地の地下には、小湊フワガネク遺跡が埋蔵されています。小湊フワガネク遺
跡は、平成22年(2010年)8月5日に、新たに国指定の史跡に指定されました。
小湊フワガネク遺跡は、6〜8世紀に位置づけられる遺跡で、約25,000㎡の範囲に広がりま
す。約18,000点の土器が出土したほか、掘立柱建物跡やヤコウガイ貝殻等の貝製品の製作・
加工場所などが確認されました。平成28年(2016年)8月17日には、出土品1,898点が、新
たに国重要文化財に指定されました。
ヤコウガイは、日本では南西諸島以南の南の島々にしか生息していない大型巻貝です。それに
もかかわらず、ヤコウガイは、平安時代ごろから螺鈿(漆細工で使われる装飾技法)の材料とし
て盛んに使われてきたほか、宮廷貴族が盃などとして愛用した高級品なのです。
ヤコウガイ貝殻が大量出土した小湊フワガネク遺跡の発掘調査は、奄美がその頃のヤコウガイ
の供給地である可能性を考える契機となりました。また琉球王国に統治されていた以前の奄美
社会を解明する手がかりとして非常に大切なものなので、国指定文化財として保存されること
が決まりました。
小湊フワガネク遺跡からは他にも、大量のヤコウガイと、そ
れを加工して貝匙を製作する各工程の資料が出土しており、
この地で集中的な貝匙生産が行われていたことが窺えま
す。これに加えて、貝札等の貝製品も出土し、また多数の貝
玉を副葬した墓坑も発見されています。
これらは5〜7世紀頃の所産と見られ、南島地域において集
中的な貝製品生産を行った工房的性格の強い遺跡の出土品
として、当時の交易を考える上でも貴重とされていま

す。

文・写真/別府 亮

http://www.amamicco.net/「奄美大島探検マップ」より

夜光貝匙

空から見た小湊フワガネク遺跡

出土土器(兼久式土器)

夜光貝匙(完形品)

All about AMAMI OSHIMA

奄美大島について

北東から南西へと、斜めに長々と連なる日本列島。その九州の端「鹿児
島」から南へ向かうこと380km。そこに奄美大島はあります。鹿児島か
らは飛行機で50分、船なら11時間。
周囲461Km、面積712㎢の奄美大島は、北方領土を除くと、日本の島
の中では沖縄本島、佐渡島についで3番目に大きい島です。そこに7万と
ちょっとの人間が住んでいます。沖縄本島の人口が100万人を超えること
を考えると、人の少ない島と言えます。
面積的にどれぐらいかというと、琵琶湖よりちょっと大きく、東京湾より
少し小さいぐらい。大阪府の半分よりやや小さく、東京都のほぼ1/3。よ
くある話だと、東京ドーム15,228個分(たぶん‥)。ちなみに人口密度
は東京の1/50。奄美で東京の混雑度をイメージしたくなったら、出会う
人に×50をすればOK!。例えばビーチに10人のヒトがいたら「東京なら
500人か…」と。
年間平均気温が20℃を超す奄美大島は、亜熱帯性気候に属する暖かい島。
夏場は30℃前後、冬場は10℃前後の気温となります。夏場の陽射しはさ
すがに強いですが、最高気温が32℃を超えることは稀です。たえず海洋を
吹く風が通りぬけていくので、最夏期はむしろ本州より涼しいくらい。冬
場は意外と寒く、台風の強風域並みの北風が体温を奪っていきます。
海は透明なのが当たり前。魚が泳いでいるのも当たり前。島の周囲をサン
ゴ礁がかこみ、海の豊かな恵みを育んでいます。海水温は年間平均24℃。
5月〜10月頃は27℃前後で、11月から4月は22℃前後。ビーチに人は少
ないし、太陽は眩しいし、砂は熱いし、ホント気持ちのいい海です。
奄美は694mの湯湾岳を筆頭に、南西諸島の中では高い山の多い島です。
島の85%以上が山におおわれているため、人々は島のへりにくっつくよう
に住んでいます。島には日本で最も危険なヘビ類と言われる『ハブ』が住
むため、安易に森や茂みには入ることができません。だがハブは人々の生
命を脅かす生物であると同時に、森の守神としても存在してきました。ハ
ブがいるために安易に森へ立ち入れないことが、森を開発から守ったとも
よく言われます(※人の手が全く入って無い原生林は2%しか残っておら
ず、実際はハブがいても開発は行われてます。今は回復して緑豊かな山々
ですが、昔は伐採も盛んだったようです)。現在は、深い緑におおわれた
島の山々。森には天然記念物のアマミノクロウサギやルリカケス等も暮ら
しており、野生が息づく素敵な森になっています。

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